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【クリティカル領域看護師必見】IABPを理解しよう!

病棟に出勤すると、なんだが見慣れない機械が患者さんの周りに置いてあり、絶えず動いています。これは何だろうか?

このシリーズでは患者さんの治療をサポートする医療機器についての解説をしていきたいと思います。

第一回目はIABPについてです。IABPとはなんなのか?どんなメリットがあるのか?どんなデメリットに注意しなければならないのか?私たちのできる看護はなんなのか?を紹介します。

では、スキマ時間を使って勉強していきましょう!!


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IABPとは?

【Intra-aortic Balloom Pumping】の頭文字をとってIABPといいいます。病棟では「バルパン」なんて呼ばれることが多いかもしれません。

  • Intra-aortic=大動脈内
  • Balloom=バルーン(そのままです笑)
  • Pumping=ポンピングする=膨らませたり萎ませたりすると言うこと

この機械は何をしているのかというと、心臓から出てきた太い血管の中に風船を置いておいて、心臓の動きに合わせてその風船を膨らませたり萎ませたりすることで、いろんな良いことがおきますよ!と言う代物です。

IABP装着によるメリット

さて、ではいろんな良いこととはなんだ?と言うのをみなさん知りたいと思います。重要なポイントは2つ!!

  1. ダイアストリック・オーグメンテーション
  2. シストリック・アンローディング

これだけなんです!

ひとつずつ絵なども交えながら紹介していきます!!

ダイアストリック・オーグメンテーション

難しい言葉で言うと「拡張期昇圧効果」とも言います。要は、「心臓の拡張期にバルーンを膨らませることで冠血流を増大させて、心筋への酸素供給量を増やす」効果があります。

まず、冠動脈へ血流が流れるタイミングについて説明します。冠動脈へ血液が流れるタイミングは心臓の拡張期です。拡張するタイミングで心臓の筋肉が弛緩するため、開いた冠動脈へ、大動脈の圧力によって流れ込むというわけです。

IABPというのはこの辺りにバルーンが入っています。赤い矢印が血液の流れになります。

このバルーンが心臓が拡張するタイミングで膨らむことで弓部大動脈の圧力が上がり、冠動脈へ血液が多く流れるという仕組みです。

冠動脈へ多くの血液が流れますよたくさん酸素を送り届けますよ、というメリットがあります。

シストリック・アンローディング

こちらは、「収縮期後負荷軽減効果」と言います。こちらは心臓が収縮するタイミングバルーンも同時に収縮します。バルーンが収縮することで発生する吸引力(陰圧)によって大動脈内の圧力が低下します。その結果大動脈弁が開きやすくなり左室が血液を送り出しやすくなります

これは左室の駆出抵抗が減少することで通常よりも低い圧力で血液を拍出することができるため、心筋の仕事量を減らすとともに心筋の酸素消費量を減少させるということです。

IABPによる弊害と注意点

IABPは心臓の負担を減らすことができる素晴らしい機械ではありますが、もちろん合併症のリスクやその他注意しなければならないこともあります。

IABPの正しい挿入位置

バルーンのサイズは患者さんの体格によってサイズを決めます、そして適切なサイズを「適切な場所」に入れなければなりません。その場所とは

バルーン先端が左鎖骨下動脈の分岐部から下2㎝程度の場所にある

です!

大動脈にはいくつかの枝分かれした血管があり、そこから脳や腕、腹部臓器に血液を送り届けています。その中に大きなバルーンを入れるわけですから、位置をミスると、それらの枝分かれした血管を塞いでしまいますよね。

そうならないために、適切なバルーンのサイズで適切な位置に配置することが必要となります。

バルーンの先端はX線に反応するため、連日のレントゲン検査で確認することができます。鎖骨下動脈は弓部大動脈のほぼてっぺんにありますので、レントゲンでは弓部大動脈の1番上付近からバルーンの先端までの距離を見ることで測定できます。

バルーンが上すぎると、弓部大動脈を突き破ってしまったり、適切な効果が得られないなどのリスクがあります。

バルーンが下すぎると、適切な効果が得られないだけでなく、腎動脈などを塞いでしまい、腎障害を引き起こすリスクがあります。

また、前回のレントゲン検査の時よりも先端の位置がずれている場合カテーテルが抜けかけている可能性もあるため固定方法や患者さんの安静保持状況の評価などが必要となります。

IABPによる合併症と看護のポイント

様々な合併症リスクがあるため、看護のポイントも合わせて紹介します

  1. 大動脈穿孔•解離…IABP挿入時などに起きる可能性があります。循環動態の大幅な破綻腰背部痛の出現、意識レベルの低下などが起きるためそれらの観察と急変時対応ができる準備をすぐにしておきます。
  2. 易血栓形成…バルーンやカテーテルは体にとっては異物であるため血栓を形成しやすくなります。そのためヘパリンの持続投与などを行なって血を固まりにくくさせますが、血栓塞栓が起こる可能性を0%にはできません。そこでACTなどの凝固能評価を行い適切な抗凝固薬を投与しながら、腹部動脈や腎動脈、上腸間膜動脈の各種虚血症状がないかどうかを観察します。腸蠕動音はどうか?腹痛は出ていないか?尿量が急激に減っていないか?血尿が出ていないか?などを観察します。
  3. バルーンによる臓器虚血…前述した通りバルーンによる腹部臓器の虚血のリスクもあります。バルーンの先端位置に問題がないかどうかを確認するとともに、2.易血栓形成のところでも説明した各種臓器虚血症状の出現がないかを観察していきます.
  4. 挿入部出血や血腫形成…体内への遺物の挿入に伴い凝固能が促進され、凝固因子が消費されます.また、前述したヘパリンの使用なども相まってカテーテルの挿入部位からの出血のリスク血腫形成のリスクがあります。カテーテル挿入部位の観察として出血していたり内出血血腫の形成がないかを見ます。血液データの凝固能やHbの推移なども併せて見ましょう。また、患者さんが安静を保持できないと下肢の運動によって出血するリスクも高くなるため患者さんへの説明や必要に応じて鎮静剤の使用なども検討しましょう、
  5. バルーンの破裂…石灰化の強い動脈壁であれば、バルーンが拡張したり収縮したりする動きに伴い摩擦が生じます。これによりバルーンが破裂する可能性があります。バルーンは拡張させるために心臓の動きに合わせてヘリウムガスを送り込んでいますが、それが血管内に入っていってしまうため、早急な対応が必要です。破裂した場合、IABPのカテーテル内に血液が混入していたり、IABPのガスリークアラームがなったり、拡張期動脈圧の低下などが生じるため、速やかに医師への報告や必要に応じて機器の作動停止などを行います。
  6. 下肢の虚血…IABPカテーテルは鼠蹊部の大腿動脈から胸部大動脈まで挿入します。そのため、カテーテルを挿入している側の下肢の血流が滞る可能性があります。特に動脈硬化などを起こしている血管は障害されやすいため注意が必要です。足背動脈や後脛骨動脈の触知はできるか、拍動が弱くなっていないか左右の下肢で温度差や色調に変化がないか、痺れや疼痛がないかなどを確認します。このような虚血症状が見られる場合は速やかに医師へ報告するようにしましょう。
  7. 腓骨神経麻痺…IABPの挿入およびそれに伴った同一姿勢の保持により腓骨神経が長時間圧迫され、足趾の背屈障害下腿外側の感覚障害などが生じる可能性があります。そこで、下肢の外旋位を避ける体勢を取ったり、下肢の適度な屈曲をするなどして長時間の圧迫を避けるようにします。
  8. 感染…IABPカテーテルは鼠蹊部に挿入しているとお話しましたが、鼠蹊部は陰部と距離が近いため汚染されやすい場所でもあります。カテーテル挿入部の感染兆候が無いか、血液データの炎症反応が上がっていないかを確認しましょう。また、全身および陰部の清潔を保つようにすることが大切です。
  9. 下肢の褥瘡形成…IABPカテーテルを挿入している側の足は安静を保持しなければなりません。そのため常に足を伸ばしている状態で保たなければならず、IABPを使用している患者さんは総じて循環動体に何らかの問題が生じているため、末梢循環も滞っている可能性が高く、それに伴い皮膚障害も形成しやすい状態にあります。特に踵部は褥瘡の好発部位でもあるため、定期的に踵を浮かせたり、皮膚の観察を行ったりします。

IABPの適応患者と禁忌の疾患

IABPの特徴がわかると、どういった人に使用するものなのか、そしてどんな患者さんには使えないのかなんとなくイメージができる人もいるでしょうか?ここでは、適応患者と禁忌の病態を一覧にして示しますので、一読ください。

適応患者

  • 心原性ショック(急性心筋梗塞など)
  • 重症心不全
  • 左冠動脈主幹部に病変を持つ不安定狭心症
  • 致死性不整脈
  • カテーテル治療や手術前に血行動態が不安定な症例
  • 開心術後の低心拍出量症候群
  • 人工心肺離脱困難症例
  • 急性心筋梗塞の合併症(心室瘤、心室中隔欠損、僧帽弁閉鎖不全症)

などです。

禁忌の患者さん

これらに対し、IABPを使用することで病態の悪化などが考えられるため使用できない患者さんもいます。

  • 胸部大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 大血管を損傷している患者
  • 大動脈弁閉鎖不全症(中等度以上)
  • 高度な動脈硬化や血管の高度な蛇行など

IABPの波形を見れるようになろう

IABPのモニターには心電図のほか「血圧」の波形と「バルーン」の波形が表示されています。これらは適切に動いているかを見る重症な情報となるため、見方を説明します。

IABP先端圧

左側がIABPを使用していない時の波形になります

S…収縮期血圧
D1…IABPがない時の拡張期圧

これがIABPを使用することで絵の左側のように赤と青の線を辿るようになります。

P…IABPによって増強された拡張期圧
D2…IABPの効果によって低下した拡張期圧

Pは、大動脈弁が閉鎖した直後、すなわち心臓が拡張する始まりの段階で血圧が上昇していることがわかります。これにより拡張期の冠動脈への血液の流入がサポートされます。

D2は、心臓の拡張期の最後にバルーンが収縮することで吸引力が生じ、動脈圧が急激に下がっています。これにより心臓が収縮する時の仕事量や酸素消費量が抑えられるわけですね。

このように本来は黄色い線が本来の拡張期圧であり、IABPにより青い線まで下がっています。これがIABPによる後負荷が軽減されている目安となります。

IABPが駆動しているときの正しい波形を示します。(手書きで見づらくてすみません笑)

次に、バルーンの拡張や収縮のタイミングがずれているとどうなるかをしまします。

これはバルーンの拡張が早すぎる時の波形です。黒い線が本来の正しい波形です。大動脈弁が閉じるよりも早くバルーンが拡張することで心臓の拍出が妨げられ、後負荷が増大してしまいます。その結果、黄色の線のように通常よりも早期に血圧が増大している波形となります。

今度はバルーンの拡張が遅すぎる場合の波形です。バルーンの拡張による拡張期の血圧の上昇が得られず、上行大動脈への血液の逆流がないため冠動脈への血流増加が不十分となります。

今度はバルーンの収縮が早すぎる波形です。バルーンが収縮することによる吸引力がより早期に発生するため、まず上行大動脈への血流が逆流している期間が短くなり、冠動脈への血流増加が不十分となります、さらに拡張期圧の低下も不十分となるため、後負荷を軽減させる効果も減ってしまいます

最後にバルーンの収縮が遅すぎる波形の紹介です。拡張期圧の血圧の低下が得られないどころか、心臓の収縮期にバルーンが萎んでいないためぶつかり合い、拡張期圧が上昇してしまいます。そのため駆出抵抗が上がることによって後負荷が増大し、左室の仕事量が増えてしまいます

このような波形が見られている場合は、バルーンの拡張や収縮のタイミングを心電図を見ながら調整する必要があります。

適切なタイミングはまたいずれ説明しようと思いますが、ここでは割愛します。

バルーン内圧波形

これがバルーン内圧の正常な波形です。

①オーバーシュート…バルーンが膨張した直後の部分です。ヘリウムガスの応答性が高いため、ガス抵抗によりプラトー圧よりも一瞬超過します。

②プラトー圧…バルーンが膨張し内圧が一定となっているため平坦となります。

③アンダーシュート…バルーンの収縮直後の部分です。

④ベースライン…バルーンが収縮し、内圧が安定している状態です。

正常な波形から、赤い線のようなオーバーシュートやアンダーシュートの波形部分が鈍っている場合

  • カテーテルやチューブの折れ曲がり
  • バルーンのねじれなどがある可能性があります

赤い線のようにベースラインが低下している場合、バルーンへ送り届けたヘリウムガスが機械まで戻ってきていないため、

  • カテーテルやチューブからヘリウムガスがリークしている可能性があります

プラトー圧が低い場合はバルーンのサイズが患者さんに合っていなく、小さい可能性があります。

 

このような、バルーンの波形も正しいものを覚えておき、今目の前のIABPの波形がどうなのか?異常が起きていないかわかるようにしておきましょう

私たちのできる看護ケアはなんだろう?

さてここまでIABPとはなんなのか?そして注意すべきポイント、見るべき波形のポイントなどを解説してきました。

我々看護師は患者さんの状態を観察し、異常の早期発見と早期対応が必要となります。特にIABPのような医療機器を使用している人は重症化しやすいですからね。

ここで私がのべたいのは、「IABPってめっちゃしんどいよ」ということです。もちろん看護する私たちもですが、それ以上に患者さんがです。

IABPが入っていることで

  • 寝返りは打てません
  • 足も曲げられません
  • 足元で24時間ガコンガコン音が鳴っています
  • たまにアラームも鳴ります
  • 状況によっては足が動かないように抑制される場合もあります

ただでさえ、体の状態が悪くしんどいのに、こんな条件が重なって、私なら発狂してしまいそうです。

腰痛持ちの人からしたら、ずっと同じ姿勢で寝てるのとか地獄ですよね。

なので、私たち看護師は、IABPに不慣れであればあるほどIABPの管理に必死になりがちですが、患者さんがこういう状況にあることを覚えておきましょう。

よく私は、可能な範囲で寝返りを打てるように調整したり、腰や背中をマッサージしたり、温罨法をしたり、医師に伝えて湿布を出してもらったりと、できる範囲での苦痛の軽減を患者さんと相談しながら行っています。

 

 

今日の投稿は非常に長文になってしまいましたが、いかがでしたか?この投稿を見ればIABPのほぼ全てがわかると思います。わからなくなったらまた見に来てください。質問をコメントでしていただいても構いません。

1人でも医療機器への恐怖が無くなればと思います。

今日もお疲れ様でした!


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