おはようございます!ぺい看護師です。今日も元気に看護していますか?
今日はペースメーカーについてのお話です。AAIだのVVIだのアルファベットが並んでいますが、これはなんなんだろう?と思った方もいるでしょう。そこで今日はこれらのアルファベットがなにを表していのか、そして、ペースメーカーによって得られる効果は何なのか?最後に、ちゃんと作動しているかどうかの確認の方法もお伝えしたいと思います!
ちなみに今回は心電図や心臓の刺激伝導系の話も出てきます。当ブログでは心電図に関する解説もしていますので、そちらを見てからこの記事を見ると、より理解が深めやすいと思います。よかった見ていってください。
ペースメーカーの設定について
ペースメーカーとは、不整脈や心臓の術後などによって心臓が正常に動かない時、もしくは正常に動かなくなる可能性があるときに使用します。心臓にリードというものを取り付け、機械により電気刺激を与えることで心臓を動かすというものです。
一時的なものであれば体外式のペースメーカーというものもあり、不整脈とずっと付き合っていかなければならない方は、体内に植え込む方法での永久的ペースメーカーというものもあります。
まずはアルファベットが示す意味を知りましょう
一文字目 | 二文字目 | 三文字目 |
ペーシングする部位 | センシングする部位 | 反応する方法 |
A:心房 | A:心房 | I:抑制 |
V:心室 | V:心室 | T:同期 |
D:両方(心房/心室) | D:両方(心房/心室) | D:両方(抑制/同期) |
O:なし | O:なし | O:なし |
では早速、冒頭でも話したAAIとか、VVIとはなんなのかという話から始めます。アルファベットは3文字で構成されており、一文字目から三文字目までそれぞれ異なる意味を表しています。
一文字目と二文字目は心臓の場所を表しています。
ペースメーカーは「設定した回数電気刺激を送る」ものです。
その電気刺激をどこに送るかを表したものが一文字目のアルファベットになります。
- A=Atrium=“心房“の頭文字をとっています
- V=Ventricle=“心室“の頭文字をとっています
- D=Double=“両方“の頭文字をとっています
心房に電気を送るか、心室に電気を送るか、それとも心房と心室の両方に電気を送るかを設定できます。
二つ目のアルファベットは心臓自身の動き(電気刺激)をどこで感知するかを表しています。アルファベットの意味は一文字目と変わりません。
ペースメーカーは、心臓の動き(電気刺激)が足りない時にそれを補うように電気刺激を送り、心臓を動かします。一方で、自分の心臓がちゃんと動いている時にペースメーカーが電気信号を送ってしまうと、タイミングが悪いと逆に不整脈を誘発したりしてしまいます。
そうならないように、ペースメーカーは心臓から発せられる電気刺激を感知して、タイミングを見計らって電気刺激を送ります。その電気刺激を感知する部分を二文字目のアルファベットが表しているということです。
最後に三文字目のアルファベットです。
Iというのは抑制を表しています。先ほど話した心臓から発せられる電気刺激がある場合は、ペースメーカーによる電気刺激は不要となります。よって、電気刺激を送りらない=“抑制“する、ということになります。
Tというのは同期を表しています。心臓から発せられる電気刺激に“合わせて”ペースメーカーが電気刺激を送るモードとなりますが、今はほとんど使われていません。頭の片隅にでも入れておくといいでしょう。
代表的なモード
ここからはよくあるモードと、その適応などをお伝えします。
AAI
まずは、AAIです。先ほどの表を見ながら一つ一つ確認していきます。
一文字目はペーシングする場所を表しており、Aは心房です。
二文字目はセンシングする場所を表しており、同じくAは心房です。
三文字目は反応方法で、Iのため抑制となります。
よって、心房で電気刺激を監視しており、自分の心臓の心房からの電気刺激があった場合はI=抑制して、電気信号を送らず、心房で電気刺激を感知できなければ設定されたタイミング(回数)で心房に電気刺激を送ります。というモードとなります。
ペースメーカーが電気刺激を送ると心電図上には「スパイク波」という縦にまっすぐの線が入ります。ここではわかりやすくスパイク波に色をつけた状態で図にしてみました。
このようにスパイク波が出た後に、心房の電気刺激であるP波が出ていますね。これがAAIの波形となります。
この図を見て、「サイナスリズムとほとんど同じじゃね?」と思った方は鋭いですね!そうなんです。このAAIモードは生理的ペーシングと呼ばれるモードとなります。
心臓には心房と心室の二つの部屋があります。心房が収縮し、そのほんの少し後に心室が収縮することで血液を全身に送り込みます。
AAIでは心房をペースメーカーが刺激することで心房が収縮し、電気が心室まで流れていくことで、心室が収縮するため心房を刺激すること以外はサイナスリズムと変わりありません。この自然な心臓の収縮を発生させることができるため、生理的ペーシングと言われるのです。これはのちに出てくるVVIと大きく異なる点であるため、よく覚えておくといいでしょう!
AAIはどんな人に使うか
このモードは、心房から適切な電気刺激が発せられない人に対して使われます。刺激伝導路でいうと、洞結節になんらかの障害がある時に、代わりにペースメーカーで刺激を発生させる必要がある人ということですね。
例えば、洞不全症候群(SSS)の方や、開心術後などで心拍数が低下している、もしくは心拍数が低下しやすい人などに使用します。
一方で、刺激伝導路の途中になんらかの障害があり、心房で発生した電気刺激が心室まで伝わらない状態の人もいます。その人にこのモードを使用しても、心房で発生した電気刺激を心室まで送り届けることができず、結果心室が収縮しなくなってしまいます。そんな人には、次のVVIモードやDDDモードを使用します。
VVI
AAIの心室版と考えれば理解やすいでしょう。先ほどの表に当てはめながら見ていきましょう!
一文字目は刺激する場所です。Vなので心室です。
二文字目は感知する場所なので、同じくVで心室です。
三文字目は反応方法を示しており、Iは抑制でしたね。
よって、心室に電気刺激が送られてきているかを監視し、電気刺激が来れば何もせず(抑制)、電気刺激が送られてこなければ代わりにペースメーカーが電気刺激を発生させるというモードです。
心電図はこのようになります。
心室に電気刺激を発生させるため、スパイク波の後に心室の電気の流れを表すQRS波が出てきます。
この波形、PVCに似ているな、なんて思った人は鋭いですね!この波形は先ほどのAAIと異なり、P波と関係なしにQRS波があり、そのQRSも幅の広いWideQRS波となっています。そうです、非生理的なペーシングなのです。
本来は心房から送られてきた刺激が洞房結節、ヒス束を経て、左脚や右脚、プルキンエ繊維へと流れていきますが、VVIでは心室を直接刺激しているため、自然な流れとは異なった方法で心室を収縮させるためこのような波形となります。
VVIモードでの心臓からの血液の拍出量は自然拍出と比較して20%ほど低下すると言われています。それでも、VVIモードでなければならないのが、以下に挙げるような疾患の方です。
VVIはどんな人に使うか
まずは刺激伝導路の途中に障害がある場合です。房室ブロック(AVblock)や脚ブロック(Blanchblock)などです。心房から発せられた電気刺激が適切に心室に伝わらない状態のことです。電気の流れが滞ってしまうことで心室が収縮できないため、代わりにペースメーカーが心室を刺激するんですね。
もう一つは心房細動の方です。心房細動は心房で刺激がぐるぐる回っており、たまに心室側へ電気が流れてきます。心臓の動きは早すぎても遅すぎてもいけないことは、サイナスリズムの回でもお話しましたが、今回もそれが当てはまります。特に徐脈性の心房細動などでは心室の収縮回数が少なくなってしまい、全身に血液を十分に送り届けることができないため、VVIモードを使用し、心房での電気刺激を無視して、心室を収縮させることで、心臓を収縮させる必要があるわけです。
また、Afでは心房では刺激が発生しているものの、同結節からの定期的な刺激の発生ではありません。そして、心房中をそこら中に電気が走り回っています。そんな中に電気刺激を送り込んでも、心室に流れ込んでいきません。なので、Afの人にAAIモードでペーシングをしても意味がないのです。
当ブログではAfなどの不整脈の解説もしているので、ぜひ見てみてくださいね!
DDD
最後に急に見たことないやつが来ましたね笑
全部がD(両方)です!監視するのも、刺激するのも、全部どっちも!
心房が動いていればそのまま、動いていなければ刺激!
心室が動いていればそのまま、動いていなければ刺激!
どっちも刺激すると、こんな感じの波形になります。
このモードで重要なことが一つあります。設定項目の一つである「A-V Dely」です。
心房と心室は通常、心房が収縮した後に心室が収縮します。心電図で言えばPQ間隔にあたります。これは心拍数が早ければ間隔が短くなり、心拍数が少なければ間隔は長くなります。
心房と心室を両方監視しながら足りない時には刺激するモードなので、この間隔を決めておかないとリズミカルに心臓を収縮できないばかりか、変なタイミングで心室を刺激してしまうと不整脈を引き起こす可能性もあります。DDDの場合は「A-V Dely」を設定する必要があることを覚えておきましょう。
DDDはどんな人に使うか
AAIの時やVVIの時にも出てきた、洞不全症候群の人や房室ブロックの人などに使用されます。DDDは心房と心室をどちらも刺激するため、VVIと比較すると生理的なペーシングとなるためより自然な心臓の収縮を発生させることができます。
その一方で、永久的な植え込みペースメーカーでは、リードが多いものを選択しなければならなかったり、電池の消耗が大きいというデメリットもあります。
その他のモード
今回は主に使用されるモードを解説しましたが、それ以外にもいくつかモードがあるため、さらに知りたい人のために、簡単に説明しておきます。暇な時にでも読んでみてください。
- AOO…心臓の電気刺激に関係なく、一定の速度で心房に刺激を与えるモード
- VOO…心臓の電気刺激に関係なく、一定の速度で心室に刺激を与えるモード
- DOO…心臓の電気刺激に関係なく、一定の速度で心房と心室に刺激を与えるモード
- VVIR…全身の活動状況に応じて刺激する回数を適宜変更するモード、血液の温度や呼吸数などを察知して適切な心拍数を算出してそれに合わせた電気刺激を送ります。(四文字目のRがresponseである応答を意味しています)
- MPV…通常はAAIモードとして動いているが、2回のQRS波の脱落があった場合、DDDモードへ切り替わるモード。生理的かつ、電池の消耗を最低限に抑えることができる植え込み型ペースメーカーでの設定です。
ペースメーカーがうまく働いていないかも?
ペースメーカーも機械ですので、人間が設定をうまく調整できていなかったり、はたまた何かの理由があってきちんと作動しない場合があります。その代表的なものを説明していきます。
オーバーセンシング
ペースメーカーにはモード以外にもいくつかの設定項目があります。その一つがセンシングです。どれくらいの刺激を心臓の興奮と捉えるかという閾値を定める値です。この値を低くしすぎることで起きてしまうトラブルがオーバーセンシングです。
要はセンシング=感知しすぎてしまうということですね。
心臓から送られてきた刺激ではない刺激を電気刺激と判断し、その結果電気刺激がペースメーカーから発せられない状態となります。そのため心臓は収縮できなくなってしまいます。
心電図を見て、ペースメーカーが装着もしくは植え込みがされている状態で、P波もしくはQRS波がないのにも関わらず、スパイク波が出ていなければこのオーバーセンシングが考えられます。
すぐに医師へ報告し、ペースメーカーの設定を変更するようにしましょう。
アンダーセンシング
先ほどのオーバーセンシングとは逆に、閾値が高すぎることで心臓から発せられる電気刺激を、感知できずにペーシングしてしまう状態のことです。P波やQRS波があるにも関わらず、スパイク波が出ている場合はアンダーセンシングである場合があります。
この場合最も危険なものとして「スパイク on T」というものがあります。
スパイク on T とは
不整脈の中でも、心室細動などへ移行しやすい一際危険なものでもある「R on T」のペースメーカー版が「スパイク on T」です。QRS波を感知することができずに心室にペーシングしたタイミングが、自分の心臓のT波と重なってしまうことで、不整脈を誘発してしまう可能性があります。見つけたらすぐに報告して設定を変更するようにしましょう。
ペーシングフェラー
先程まではセンシングの設定を変更する必要がある場合でした。今回は、ペーシングの設定を変える必要があるケースです。
心電図上スパイク波があるにも関わらず、その後にP波やQRS波が出ていない場合は、ペーシングフェラーが考えられます。
この場合、ペースメーカーが刺激を送る必要があると判断して電気を送ったにも関わらず心臓が収縮していないということになって今います。原因は二つあります。
一つ目は電気刺激の強さが足りない場合です。電気刺激を送っても心臓が反応しなければ刺激を送る意味がありません。よって、ペーシングの強さを上げる必要があります。
二つ目は電極が外れている場合です。これはなんらかの理由で体内で電極の位置がズレた可能性があります。体外式ペースメーカーの場合は再挿入やモードの変更などを検討する必要が出てきます。
フュージョンビート
これは自分の心臓の収縮と、ペースメーカーによる電気刺激が同時に起こっている状態を指します。心電図ではQRS波とスパイク波が重なり、WideQRS波が見られます。
自己心拍数が60回程度かつ、ペースメーカーの設定が60回といった場合や、DDDモードでのA-V Delyが不適切な場合おき得ます。
危険度は低いですが、植え込み式のペースメーカーなどでは電池の消耗が激しくなるため、設定を変更することが望ましいでしょう。
いかがでしたか?
今回はボリュームの多い回となってしまいました。ペースメーカーはクリティカル領域だけでなく、植え込み型のペースメーカーを利用する方も多いため、様々な病棟で見る機会が多いと思います。
是非何度か読んでいただき、理解していただけたらと思います!
それでは、お疲れ様でした!!
参考文献