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せん妄ってなんだろう?


こんばんは!今日もスキマ時間を使って看護のことを勉強していきましょう!

勤務中に、急に患者さんがよく分からないことを言い始めたり急に声を荒げたりソワソワし始めたり、最悪挿入物を抜かれたり、そんな経験ありませんか?

でも、精神疾患などはカルテを見ても特に書いてない。急に患者さんのキャラクターが変わってしまったのでしょうか?いえいえ、それはおそらく、「せん妄」という症状です。

今日は急に起こる精神状態の変化であるせん妄について学んでいきましょう。

気になるところに飛べる目次

せん妄ってなに?

まずはせん妄とはなんなのかを理解していきましょう!まずは米国精神医学会が定めているせん妄の定義をかみ砕いて書いてみます。

注意力障害があり、急に発症し、日内変動がある認知機能の変化。そしてその原因に身体的疾患や薬物の使用などがある。」こんなところです。

かみ砕いてもよくわかりませんね笑
具体的な症状などを見て、そこから理解を深めましょう。

症状

以下に、ずらーっと症状を並べます。が、これらは単一の症状ではなくそれぞれが組み合わさったり入れ替わったりしながら経過します。

  • 時間、場所、自分の名前が分からなくなる(失見当識
  • 怒りっぽくなる(易怒性
  • 落ち着きがなくなる
  • 言動の一貫性がない、辻褄が合わない
  • 話をしていても聞いていない、関係のない行動をとる(注意力障害
  • 現在と過去が混同したり、記憶が消失したりする(記憶障害
  • 声掛けに対する反応が薄くなる、なくなる
  • 日中ずっと眠そうだったり、活動意欲がなくなる

少しわかりやすくなりましたか?次はさらに細かく見ていきます。

注意力障害って?

これがせん妄の中心となる症状です。まずは一例です。

舞台は居酒屋。店内はにぎわっています。多くのお客さんがテーブルを囲みながら談笑している。その間をビールを持った店員さんが通ったり、「いらっしゃいませー!」「ご注文お伺いします!」と叫んだり、ほかのお客さんと会話をしている。

今あなたは、一緒に飲みに来た友人と話をしています。にぎわう店内で、あなたは友人の話に注意を向けて話の内容を理解することができますよね?

一方で、ほかのお客さんの会話や店員の「いらっしゃいませー!」などは音として聞こえているものの、その内容を理解したり、記憶したりすることはしないようにすることができます。
*隣のテーブルで興味のある話をしていたら話は別ですが。

このように、自分が必要とする情報に注力し、そのほかの情報の流入を遮断することが必要になるわけですね。これが注意力というわけです。

この注意力が障害されることで看護師の話を聞くことができなかったり話したことを忘れてしまったりした結果、安静度を守れなかったり、挙句の果てに大事な挿入物を引っこ抜いたりしていまうのです。

認知機能の障害

こちらは想像がつきやすいのではないでしょうか?いわゆる見当識と言われる日時・場所・時間が分からなくなったり記憶障害が見られたり、知覚が障害されたりするものです。

どんな患者に発症するのか?

ではこれらはなぜ起こるのでしょうか?以下にせん妄に関連する因子を列挙してみます。

  • 薬剤の使用…ベンゾジアゼピン系の薬剤を代表とする鎮静剤の使用は優位にせん妄発症の可能性を増大させます。
  • 高齢…加齢に伴う認知力の低下や脳機能低下により、リスクが高まります。
  • 全身状態…患者さんの全身状態が悪いほど、リスクが高まります。近年せん妄は多臓器不全の一種ともとらえられ、急性の脳機能不全状態であるとも言われています。
  • 環境要因…急激な環境の変化感覚の遮断(音や光のない環境)、活動制限(身体の抑制や安静度制限)などは環境ストレスによる脳機能への影響が明らかとなっています。
  • 睡眠障害…騒音や上記の環境要因に伴う睡眠障害によりサーカディアンリズムの乱れや睡眠ホルモンのバランスが崩れることでせん妄が促進されます。

これらの要因が複数重なり合うことでせん妄発症のリスクが高まっていくのです。

評価ツール

ICU滞在中の患者さんのうち、80%程度がせん妄を発症しているといわれています。その一方で、看護師がせん妄を見落としている確率も70%程度あるともいわれています。

せん妄には3つのパターンがあります。①過活動型せん妄低活動型せん妄混合型せん妄です。

①はソワソワしたり、易怒性が高く暴力行為などを行ったりするものです。

②は意欲低下や日中常にぼーっとしていたり、関心が何にも向かないなどの症状です。

③は上記の①と②が混合して見られます。

このうち、①は看護師を「困らせる」ことが多いためによく発見されます。その一方で②は、一見穏やかで看護師の「手を煩わせない」ためにスルーされがちではないでしょうか?

しかし、予後の観点からみると②のせん妄のほうが非常に悪いことが分かっています。

せん妄をなるべく早く発見し、対応することが必要とされるため、下記にせん妄のスクリーニングとして使われるスコアを二つ紹介します。

ICDSC【Intensive Care Delirium Screening Checklist】

患者さんの8~24時間の状態に基づいて評価し点数化する。0~8点のうち1~3点を亜せん妄、4点以上をせん妄と評価するツールである。患者さんの協力なしに看護師の評価のみで実施できるのが利点となります。*チェック項目に関してはネットにいっぱい落ちていますので参照ください

CAM-ICU【Confusion Assessment Method for ICU】

こちらの評価方法は、患者さんの現在の状態をフローシートに沿って評価を行う方法です。気管挿管されている患者さんを対象に作られた評価方法です。こちらは患者さんの協力が必要であり、いくつかのステップを踏まなければならないため少し評価が大変だったりしますね。前述のICDSCと比較すると特異度が高いというメリットがあります。

さてさて、ここまでだいぶ長くなってしまいましたね。

次からは我々看護師がどういったことをしていくことで患者さんによい効果が生まれるかを考えていきましょう。

どんな看護をしていこう

ここからは看護師として何をしていけばいいのかを学んでいきましょう。

まずは予防から!

前のページで様々な要因がせん妄に関わっていると伝えましたが、それらの要因をつぶしていくことが必要です。ここでは私が実践していることを交えながら示していこうと思います。

  • まずは対象となりうる患者さんを抽出する…全患者に対して警戒していては業務がままなりませんよね。そこでリスクの高そうな患者さんをピックアップする必要があります。高齢者の方や以前せん妄になったことがある方、敗血症などの全身性の炎症が進んでいる方を始めとした全身状態の悪い方、高度な侵襲ラインが挿入されていることで体動などに制限がある方疼痛の強い方などです。また、勤務開始時のラウンドにて患者さんとコミュニケーションをとり、見当識や記憶状況、会話の整合性などを評価して、リスク評価やせん妄のスクリーニングを行います。
  • 患者さんとコミュニケーションをとる…感覚の遮断や非日常的な環境がせん妄発症を促進させることは前ページで分かりましたよね。そこで会話を通じて患者さんが今どこにいるのか、何故いるのか、今何月何日の何時何分なのか、現状認知が促進できるように関わっていきます。また、集中治療室などの非日常的な環境や、自身の体のことに対して大きな不安を抱えています。その不安を少しでも解消できるといいですね。
  • 睡眠環境を整える…まずはイブニングケアを行います。私たちも寝る前にお風呂に入ったり、歯磨きする人が多いと思います。寝る前に入浴はできないまでも、洗面を促したり、歯磨きをしてもらったりとイブニングケアを進めていきます。もちろん人によって就寝前のルーティンは違います。消灯時間も病院は一斉に消灯されますが、それも入院前は人それぞれです。そこで、入院前の生活はどうだったのかをしっかりと聞いておく必要があります。何時に寝ているのか?何時に起きているのか?自宅の就寝時の照明の状況は?などを確認し、可能な範囲でその環境に合わせられるようにしましょう。
    また可能であれば私は患者さんには①耳栓アイマスク自分の時計を持ってきてもらうようにしています。もちろん患者さんの好みですが、騒音や光害を遮断できるようにしたり、現在の日時をすぐに確認できるようにしておきます。
  • 見当識を保持できるような関り…環境変化が目まぐるしいですから、なるべく日常の感覚を取り戻せるように家族の写真を置いたり、いつも使っているカレンダーを配置したりしてみましょう。また僕の勤めているICUでは、病院の写真と病院名が書かれているポスターをラミネートしてベッドサイドの目につくところに置くようにしています。今どこにいるのかすぐに目に入るようにするためですね。
  • 日常生活に準じた生活リズムとなるようにする…初めに言っておきたいのが、私は夜眠れなくなるのを予防するために日中頑張って起こすというのはおススメしません。限度はあるものの、寝たいときは眠らせてあげて、起きた後にしっかりと活動できるようにします。その前提の中で、極力日中にリハビリテーションを行ったり、朝に髭剃りをしたり、自身のいつものタイミングで義歯を装着したりなどです。
  • 鎮静剤は治療上可能な範囲で少なく、短くを提案してみる…治療上深い鎮静が必要でない場合、なるべくミダゾラムなどの鎮静剤を避けつつ、デクスメデトミジン(プレセデックス)などの使用を最小限度にできるよう患者さんとのコミュニケーションや鎮痛剤の使用の検討を行いましょう。
  • 除痛…疼痛などのストレスは精神状態に大きな影響を与えます。よって、術後の疼痛挿管チューブによる違和感、体動制限による腰痛などに対して早急に薬剤の使用やマッサージなどを行い不快感の除去に努めます。

発症してしまったら

どんなに予防していても発症してしまうものです。発症後はどうすればいいのでしょうか?

  1. まずは安全の確保が必要です。特に過活動型のせん妄は挿入物の計画外抜去の可能性があるため、人員を導入し患者さんに平易な言葉で説明をしたり、傾聴したりし、興奮を助長しないように関わります。必要に応じて向精神薬の使用が有効な場合もあります。もちろんこういった薬剤の使用はせん妄の悪化のリスクもあるため、鎮静が必要か、薬剤を使用しないほうが適切かをその場で判断していかなければならないと思います。
  2. 低活動型のせん妄では日中の傾眠などもあり、さらに夜間せん妄へとつながる可能性もあります。早期離床がせん妄の回復に有効と研究結果でも明らかになっているため、状態に応じたリハビリテーションの実施もいいかもしれません。
  3. 睡眠環境および療養環境の是正を行い、よく眠れるように、安心して過ごすことができるようにチームでできることを考えるようにしましょう。
  4. もちろん、患者さん自身の安全だけでなく、医療者の安全も担保できない場合は、抑制帯などを使用することで、安全を確保する必要がある場面もあります。一方で、抑制帯の使用はせん妄を悪化させるリスクもあるため、使用する場面や方法はしっかりアセスメントしなければなりません。
  5. 家族のケアも欠かせません。急激な認知力や精神状態の変化に、「認知症になってしまったのでは?」と思ったり、患者さんの変貌に家族が腰を抜かしてしまったり、パニックになったりすることもあります。もし、患者さんがせん妄になっている場合は、家族にせん妄とは何なのかをしっかりと伝えるとともに、可逆性の変化であること、そして家族の声掛けや関りがせん妄回復に非常に重要であることなどを伝えるようにしましょう。せん妄は看護師だけでなく、コメディカルや家族を巻き込んだチーム医療で乗り切る必要があるのです。

まとめ

さて、長々と書いてきましたがいかがでしたでしょうか?特に今年はCOVID-19により面会制限が行われている病院が多数だと思います。家族と会えず、非日常の中で不安や病気と孤独に戦っていくのはとても大変なことだと思います。そんな患者さんに寄り添った看護を提供できるよう、みんなで頑張っていきましょう!!

参考文献
ICNR Vol.2 No.2

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